Isao Endo  遠藤 功

遠藤功が「現場力」を語るコラムをお届けします

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早稲田大学大学院教授、株式会社ローランド・ベルガー会長を務める遠藤功のプロフィールを紹介します

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『現場力を鍛える』『見える化』など、遠藤功の書籍を紹介します

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連載コラム「現場通信」

Weekly現場通信 vol.76 上海

[2011-08-15]

 先週、上海を訪問してきました。今回は現地の日系企業4社を訪問し、現在の中国の実情についてお話を伺うことが主目的でした。
 急速な成長を遂げ、世界経済を牽引してきた中国ですが、ここにきて調整局面を迎えているのは事実です。インフレに対する懸念、賃金の高騰、自動車など一部の消費の頭打ちなど、いくつもの課題が浮かび上がっているのは事実です。
 万博が終了した上海は、不動産の開発も一服。次から次へと高層ビルが建築されていた3~5年前の状況とは大きく変わりました。今回宿泊したフォーシーズンズホテルに隣接する地域は再開発の最中でしたが、少なくとも中心部における大規模再開発は打ち止めの様相です。
 最大の懸念は消費者物価の上昇でしょう。私が訪問している時に、中国国家統計局が7月の消費者物価指数(CPI)を発表しましたが、それは6.5%(対前年同月比)ときわめて高い水準でした。中でも、全体の3割を占める食品は14.8%の上昇。中国の食卓に欠かせない豚肉は56.7%の高騰。現地の英字新聞(CHINA DAILY)でも、豚肉が買えない消費者の不満が大きな記事として載せられていました。
 景気低迷に苦慮する海外主要国の資金が、相対的に成長力の高い中国に流れ込めば、物価をさらに押し上げることになるかもしれません。そうすれば、低所得者層の不満はさらに増大し、大きな社会リスクとなります。

 もちろん、政府も手をこまねいているわけではありません。物価抑制に動きだす一方で、賃金の引き上げも行っています。現在の上海の最低賃金(月給)は1280元。日本円に換算すると、約1万5千円。2005年には700元だったのですから、6年で1.8倍に跳ね上がっています。
 これはあくまで「最低」賃金ですから、実際の求人市場では優秀でやる気のある人を採用しようとすれば、その給与はもっと跳ね上がります。今回訪問した日系企業でも、給与水準の設定についてはどこも大変苦労していました。
 金融機関の大学新卒者の初任給は4000元程度(4万8千円)。小売り企業における高卒の店長クラスで4500元(5万4千円)。経験のある中途採用者は6000元(7万2千円)。それなりの管理職を採用しようとすれば、最低でも1~3万元(12万円~36万円)は必要とのことでした。
 日系以外の外資系企業は、これよりはるかに高い給与(2倍以上)をオファーしており、この賃金水準では「Top Tier」の人材はとれないのも事実です。少し前まで、中国の給与水準は日本の10分の1、20分の1と言われていたのが、あっと言う間に日本の水準に追いつこうとしています。


 もちろん、これはあくまでも上海という大都会の一断面にすぎません。上海、北京、天津などを除けば、地方都市の給与水準はここまで高騰していませんし、消費需要もまだまだ旺盛、都市開発も進んでいます。今回お話を伺った三井住友銀行(中国)企業調査部の園田直孝部長のお話では、「多様なリスクは内包しているが、底堅い実需に支えられ、ファンダメンタルズは堅調」と教えていただきました。
 ミクロで起きる様々な課題や矛盾を修正、克服しながら、どうやってマクロ全体の舵取りをしていくのか。しばらくこの国からは目が離せません。

(お知らせ)
 知識創造研究の世界的な権威である一橋大学名誉教授・野中郁次郎先生との共著『日本企業にいま大切なこと』がPHP新書として発売されました。これは雑誌「Voice」で数回に亘って行った対談や記事をもとに再編集したものです。
 野中先生と共著を出版させていただくなど、本当に夢のような出来事です。私にとってかけがえのないメモリアルな1冊となりました。是非お読みください!

http://www.php.co.jp/books/sp/nihonkigyo.php#ebook

[今週の出会い]

 上海で一緒に食事をしたローランド・ベルガーの若手メンバー3人衆です(藤原亮太君、林英俊君、施依依さん)。藤原君は29歳の若さながら、ローランド・ベルガー上海駐在員(中国ジャパンデスク)として3週間前に赴任したばかりです。今回は私と一緒に企業訪問に同行しました。
 林君、施さんはあるプロジェクトでのべ6ヶ月に亘って、上海に長期出張しています。中国のダイナミックな変化を体感しながら、コンサルタントとして力をつけています。こうした若い世代が海外で大いに活躍しています。

[今週のシナ]

 ヘアカットをしたシナは、今度はピンクの飾りをつけられてしまいました。黄色のひまわりがお似合いだったので、今回も希望したのですが、人気が高く、残念ながら品切れでした。シナも納得いかないようで、憮然としています。(単に眠いだけかもしれませんが・・・)