Isao Endo  遠藤 功

遠藤功が「現場力」を語るコラムをお届けします

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早稲田大学大学院教授、株式会社ローランド・ベルガー会長を務める遠藤功のプロフィールを紹介します

講演活動についての概要を紹介します

『現場力を鍛える』『見える化』など、遠藤功の書籍を紹介します

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一流のビジネスパーソンを目指す人のための総合型ビジネススクール「カラーズ・ビジネス・カレッジ」を紹介します

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連載コラム「現場通信」

Weekly現場通信 vol.78 新興国開拓と品質

[2011-08-29]

 先週、大阪で開かれた日本品質管理学会関西支部のシンポジウムに招かれ、講演とパネル討論に出席してきました。テーマは「今、再び、日本品質・現場力を問う」。120名以上の参加者が集まり、盛況でした。
当日は、『サムスンの決定はなぜ世界一速いのか』(角川新書)などの著書で知られる吉川良三氏(東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員)と私が講演を行い、この二人にダイキン工業常務執行役員の岡田慎也氏が加わり、神戸学院大学の今野勤教授の司会でパネル討論が進められました。
 私は講演で「日本企業は10年先を見据えて、世界のハイエンド(プレミアム)市場を主戦場とすべき」という持論を展開しました。韓国、台湾企業が力をつけ、中国、インド、ブラジルなどの新興国からから巨大な母国市場を背景に巨大企業が生まれてくる中で、日本企業が「戦う土俵」をどう設定するかはきわめて重要な戦略的論点です。
 新興国の消費者が経済的豊さを手に入れるにつれ、膨大な「普及品」市場が形成されつつあります。確かに、そうした市場はボリューム的には魅力的ではありますが、日本企業は敢えてそこを主戦場にすべきではないというのが私の主張です。
 パネル討論では、参加者からの質問を中心に議論を行ったのですが、新興国のボリュームゾーン、コモディティ、汎用品市場を捨てるのは得策ではないのではという意見が複数出されました。
 確かに、目の前にある巨大な市場は一見魅力的です。しかし、その市場は競争も激しく、世界に誇る品質を売り物にしてきた日本企業の特徴が活きる市場ではありません。また、新興国市場の成熟と共に、消費者の「欲望の質」は確実に高まり、ハイエンド市場もそれなりの規模で間違いなく成長します。ハイエンドというセグメントの中で、ボリュームを追求していくことは十分に可能です。
 また、ボリュームゾーンやコモディティ、汎用品といった市場が具体的に何を指すのかも明確ではありません。ターゲットを曖昧にしたまま、巨大な新興国市場の上から下まですべてをカバーしようとして、どれも中途半端になってしまうことを私は懸念するのです。
 吉川先生が講演で説明された「過剰品質」「過剰機能」の違いが分からないという質問もありました。何が過剰で、何が適切かは顧客が決めることですが、その顧客も成熟と共に進化していきます。そうしたダイナミックなプロセスを念頭に、最適品質とは何かを設定する必要があります。
 未来においても、品質は日本企業の生命線です。しかし、そのためには成長する新興国市場の誰に(どのセグメントに)照準を合わせるのかという「ぶれない戦略」を明確にすることが不可欠です。品質と戦略は表裏一体の関係にあることを再認識することができたシンポジウムでした。

[今週の出会い]

 8月20日にカラーズ・ビジネス・カレッジ(CBC)が開催した夏季特別講座「『旭山動物園』から学ぶ経営の原理原則」を行いました。当日の参加者は8名でしたが、その分中身の濃い議論ができたと思います。
 既にCBCで受講したことのある人、今回初参加だった人などが入り混じった8人。業界はさまざまで、しかも年齢層も20代から60代まで見事に分散。これだけ多様なバックグラウンドを持つ8人が集まって、ある動物園について議論するのですから、普段では味わえない異質の時間です。「学校」という“場”の魅力はまさにそこにあります。
 CBC第2期は10月開講です。興味のある方は是非参加して下さい。「異質の出会い」があなたを待っています!

[今週のシナ]

おやつを期待して、正座して待つシナです。但し、この1秒後には待ち切れずに飛びかかってきます。相変わらず、食いしん坊なシナです。