Isao Endo  遠藤 功

遠藤功が「現場力」を語るコラムをお届けします

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連載コラム「現場通信」

Weekly現場通信 vol.81 北京

[2011-09-15]

 9月初旬に中国・北京に行ってきました。今回の主目的は、私が客員教授を務めている長江商学院での特別講義のためです。中国企業の経営幹部を対象に、中国、米国、韓国、そして日本の教員が各1日ずつ、それぞれの国の企業のグローバル戦略について講義を行うという4日間集中のプログラムでした。
 参加者は約30人。私のセッションには現在中国展開を積極的に進めている良品計画の松井忠三会長をゲストとしてお招きしました。良品計画のこれまでの歩み、海外戦略について生々しいエピソードも含めてお話しいただき、受講生も熱心に聴き入っていました。その後のQ&Aも、質問が後を絶たないほど活発でした。

 この10年ほど中国には年に数回は必ず足を運んでいますが、実は北京を訪問するのは久しぶりでした。おそらく7~8年ぶりです。北京に用がなかったということもありますが、北京五輪が終わるまでは避けていたという面もあります。
 ということで、今回は北京で行ってみたいところが何ヶ所かありました。北京に到着した日の午後はフリーだったので、久しぶりに北京散策をしました。
 まず目指したのは、天安門広場の南にある前門(正陽門)辺りに広がる前門大街と呼ばれるエリア。以前は、清朝時代から続くと言われる商店などが集まる、庶民的な雑踏のエリアでした。けっして綺麗と呼べるところではありませんでしたが、エネルギッシュで、中国の庶民の生活を感じることができるところでした。

 しかし、久しぶりに訪れた前門にかつての面影はまったくありませんでした。2008年の五輪に合わせて街自体を大改装したのですが、できの悪いテーマパークか安普請の映画セットのような人工的で、チープな「ニセ物」の街に変貌してしまっていました。レトロさを出すために、チンチン電車を走らせているのですが、これが何とももの哀しさを助長させていました。
 路地を一本入ったところでは、何十もの飲食店が集積する新たな再開発が今も続けられていました。経済発展、近代化を目指す中国にとってはやむを得ないことなのですが、「もう少しやりようがあるだろう」と嘆息してしまいました。

 翌朝、早く起きて北京駅を目指しました。言うまでもなく、北京の「表玄関」で、中国全土の地方都市のみならず、モスクワや平譲などへの列車も運行されています。
 以前、訪れた時の北京駅はとんでもない喧騒に包まれていました。大きな荷物を抱えた地方からの行商や出稼ぎの人たちでごった返し、広い駅前広場は
人で溢れ返っていました。しかし、今回は拍子抜けするほど人が少なく、「普通」のターミナル駅になっていました。
 私が目指したのは北京駅ではなく、駅の北にある「邮通街」というエリアでした。7~8年前に散策している時に見つけた何の変哲もない庶民が生活するエリアなのですが、私は何とも言えない居心地のよさを感じました。普段着の北京の生活が垣間見え、小さなエリアなのに何時間もウロウロしていました。
 はたして「邮通街」はまだ残っているのだろうか?「北京五輪と共に消えてしまったのではないか・・・」と思いつつ訪ねてみると、「邮通街」はひっそりと残っていました。    
街の入り口には1軒の食堂があります。揚げパン1元(12円)、蒸し立ての小籠包5元(60円)。湯気の立つ小籠包をビニール袋に入れて、持ち帰る人も数多くいます。家族の朝食にするのでしょう。

 食堂の奥には、雑貨屋、八百屋、肉屋、麺を売っている店、クリーニング店などが並び、駅に近いせいか旅館や招待所も数多くあります。おそらく自分で川で獲ってきたであろう小さな蟹を自転車の荷台に積んで行商するおじさんもいます。舗装されていないでこぼこの土の通りには、おばあさんが椅子に座り、何をするでもなく、人の往来を眺めています。ネギを刻む音が聞こえます。
 けっして豊かではありませんが、ここには昔からの庶民の生活があります。つましい生活、でも庶民が寄り添うように集まり、そこには笑顔や何気ない日常の会話があります。どこにでもいる公安はここにもいますが、庶民たちと気さくに話し、公安までどこかほのぼのとしています。間違いなく別の空気がここには流れています。
発展・成長する北京とはかけ離れたエアポケットのような世界。取り残されたエリアということもできるかもしれません。郷愁だけで生きていけないことも分かっています。「邮通街」も近い将来、消えていく運命にあるのでしょう。

 しかし、前門のような再開発を繰り返していたのでは、中国の未来は危ういと感じます。これは日本とて同じことです。すべてを壊し、否定するのではなく、過去とうまく折り合いをつけながら、新たな街づくりを進めることがとても大切です。いくら綺麗で、モダンでも、「人の匂い」のしない街は街ではありません。街は人がつくるのです。

[今週の出会い]

 良品計画の松井忠三会長、夏さん、そしてローランド・ベルガーの上海で勤務する藤原さんとの会食の際の記念ショットです。場所は北京の梅府家宴というレストラン。道に迷って、辿り着いたお店は、中国の伝統芸能・京劇の大スター、梅蘭芳にちなんだレストラン。緑に囲まれた一軒家はとても雰囲気のよいところでした。

[今週のシナ]

 散歩の後、ソファーで眠そうにしているシナです。残暑とは呼べない猛暑が続いているので、午後の散歩は大抵夕方6時過ぎ。時間も30~40分ほどです。早く涼しい秋になって、大好きな散歩にもっと行けるのをシナは待ち望んでいます。