Isao Endo  遠藤 功

遠藤功が「現場力」を語るコラムをお届けします

遠藤功が「現場力」を語るコラムをお届けします

早稲田大学大学院教授、株式会社ローランド・ベルガー会長を務める遠藤功のプロフィールを紹介します

講演活動についての概要を紹介します

『現場力を鍛える』『見える化』など、遠藤功の書籍を紹介します

各種メディア、各種媒体での掲載とその概要を紹介します

一流のビジネスパーソンを目指す人のための総合型ビジネススクール「カラーズ・ビジネス・カレッジ」を紹介します

「現場学」を研究し、強い現場づくりを目指す遠藤研究室を紹介します

遠藤功が「現場力」を語るコラムをお届けします

連載コラム「現場通信」

Weekly現場通信 vol.85 ヤマト運輸の底力

[2011-10-24]

 ヤマト運輸の現場を訪問する機会がありました。同社は私が日本で最も「現場力」のある会社のひとつとして尊敬する会社です。東日本大震災の際にも、自らが被災者でありながら懸命に荷物を届けようとするセールスドライバー(SD)の姿が勇気と感動を与えました。
 今回訪問したのは、横浜市都筑区にある都筑仲町台センターと鶴見区にある神奈川物流ターミナルの2ヶ所です。詳しくは、近々「現場千本ノック」でご紹介したいと思いますが、同社の野心溢れる「戦略」と逞しい「現場力」の両方を実感することができました。
 仲町台センターは港北ニュータウンを担当するセンター。「センター」とは同社の宅急便の集配を担当する拠点であり、宅急便ビジネスの最前線です。このセンターに勤務するSDは8名、5台の集配車が配備されています。1日の配荷数は約800個。それとほぼ同数の集荷も行っています。
 まず驚いたのは、お話を伺った2名のSDの方々の意欲の高さ。お客様へのサービスをいかによりよくするかという意識が高く、公的サービスを担っている警察や消防の方にお話を伺っているのではと感じてしまうほど、高い当事者意識を感じました。
 そして、その意欲の高さが現場での様々な知恵につながっています。同社では、この仲町台センターをパイロット拠点として「集配改革」に取り組んでいます。主婦を中心としたパート社員を活用する「チーム集配」を導入し、午前10時までに配達を完了する荷物を増やし、「持ち戻り」荷物を減らす。そのことによって、午後の時間を集荷に使うことができる。こうした新たな仕組み作りに挑戦しているのです。
 その新たな仕組みを確立するためには、パート社員を戦力としてフルに活用するための現場の知恵が必要です。ちょっとしたマニュアルを作成したり、集配車の中の荷物棚に色分けされた住所別表示を施すなど、ひとつずつは小さなことですが、現場ならではのアイデアが活かされています。こうした工夫はすべてSDが自ら行っています。まさに、「実践知」の宝庫です。

 その次に訪問した神奈川物流ターミナルは、ヤマト運輸の大いなる野望とダイナミックな戦略を実感させるものでした。ここは約1万9千坪の広大な敷地で、配送と在庫・入出庫を一元的、総合的に行うヤマト運輸の戦略的複合施設です。
 ヤマト運輸と言うと、一般にはどうしても「宅急便」のイメージが先行しがちですが、同社はアジアにおける一貫物流サービスの実現を中長期の戦略目標として打ち出しています。そのための中核拠点となるのが、こうした高度で、大規模な物流ターミナルなのです。
 この施設には、最新鋭の物流が詰まっています。自動倉庫、自動仕分けを備えたオートピックファクトリー、メール便専用の自動仕分け機、クール宅急便専用の低温度仕分けスペース、コールセンターなど、多岐に渡る物流オペレーションがここに凝縮されています。「一貫物流」を打ち出している物流企業は数多くありますが、Door-to-Doorの宅急便網を持ち、こうした高度複合ターミナルを運営しているのは、ヤマト運輸の最大の強みです。
 顧客接点としてきめ細かいサービスを提供する「センター」、そしてダイナミックに複合サービスを実現する「ターミナル」。その両方を兼ね備えたヤマト運輸の底力を再認識した訪問となりました。

[今週の出会い]

 福井に仕事で行った際、片山津温泉に泊まってきました。この温泉がバブルの頃には大繁盛し、その後衰退していったということは知っていましたが、今どうなっているのか見たくて、訪ねてきました。
 全盛期の1980年には約150万人が押し寄せ、温泉旅館も50軒以上あったそうです。約600人もの芸者衆がいて、「男性天国」として賑わっていたことはよく知られています。それが今では、残っている温泉旅館はわずか10軒。観光客数も30万人にまで落ち込んでいます。廃墟となった巨大温泉旅館は取り壊され、今では雑草が生い茂る空き地になっています。見る影もありません。
 衰退の原因をタクシーのドライバーさんが教えてくれました。巨大旅館が温泉客を囲い込もうと、旅館の中に大規模な土産物屋やカラオケなどの施設を拡充し、地元の商店街と対立したことが衰退の主因だそうです。その結果、温泉街の商店は次々と廃業に追い込まれ、街自体が一気にさびれていったそうです。「自分さえよければ・・・」という強欲・エゴが、街を滅ぼしてしまったのです。

 確かに、片山津にはブラブラするような温泉街がありません。いくら旅館が立派でも、街に魅力がなければ、人は寄り付きません。近くの山代温泉は、旅館と商店街が共存共栄を模索し、昔ほどの勢いはないにしろ、片山津ほどは衰退していないそうです。
 宿泊した加賀観光ホテルの温泉施設は立派でした。柴山潟という風光明媚な湖を眺め、栄華盛衰を感じながらの湯浴みでした。

[今週のシナ]

 一気に涼しくなり、朝のシナとの散歩は寒いくらいです。シナは元気に尻尾をフリフリ、早足で歩いていますが、家に帰るとソファーで丸まって寝ています。そこに寄り添うと、本当にあったかい!シナのぬくもりを感じる季節です。