Isao Endo  遠藤 功

遠藤功が「現場力」を語るコラムをお届けします

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連載コラム「現場通信」

Weekly現場通信 vol.89 陸前高田とコンテナ商店街

[2011-11-21]

 先週、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた陸前高田を訪ねてきました。日本政策金融公庫盛岡支店主催の講演会に招かれた際に立ち寄ったのですが、被災地の厳しい現状と力を振り絞って立ち上がろうとする人々の思いを知ることができました。
 以前のこのコラムで、ローランド・ベルガーの世界中の仲間たちから集まった義捐金を、陸前高田の「コンテナ商店街」立ち上げのために使っていただくことをご紹介しました。その橋渡しをしていただいたのが、今、被災地で様々な支援活動を行っているNPO難民を助ける会です。今回は東北事務所長である野際紗綾子さん、小原一夫さんの車に同乗させてもらい、一ノ関から陸前高田に向かいました。

 5月に南三陸町を訪ね、被災地の想像を絶する被害の大きさは自分なりに理解しているつもりでした。陸前高田も同様に、街は壊滅しました。南三陸町よりも広いと思われるエリアが、今でも無残な状態に晒されています。
 震災から8ヶ月以上が経過し、少しは復興の足掛かりが見えるのではという淡い期待は、木っ端微塵に打ち砕かれました。街を見る限り、復興の“芽”すら見えません。うず高く積まれた瓦礫の山がここかしこに点在し、一面野っ原となった旧市街地には雑草が生い茂り、すすきが風に揺れています。
 海に近いエリアは80cm以上地盤が沈下し、水没しています。ダンプカーが行き交い、土を埋める懸命の作業が行われていますが、地盤沈下はまだ続いているそうです。

 7万本の松が植えられ、日本百景でもあった高田松原は津波に根こそぎもっていかれてしまいました。奇跡的に1本だけ倒れずに残った陸前高田のシンボル「希望の1本松」も、塩害でとても危険な状態だそうです。「頑張れ!」と心の中で祈らざるを得ませんでした。
 現場をこの目で見て、「復興は最短でも10年がかり」という言葉をようやく理解しました。土地の水没への対処・インフラの整備、地権者との交渉・利害調整、復興の青図作り・合意形成。新しい街の建設が始まるのは、こうした気が遠くなるようなプロセスを経た後のことなのです。

 

 被災地を車で辿った後、旧市街地から少し奥まったところにある「コンテナ商店街」の予定地に赴きました。地元の大手スーパーであるMAIYAやコンビニ、クリーニング店など何軒かの仮設店舗がある場所と隣接したところに、「コンテナ商店街」がこれから創られます。
 今はコンテナ2基がぽつんと設置され、店もまだオープンしていませんが、年内には8基を設置し、4~5軒の店舗がオープンする予定です。第1期では20店舗程度の誘致を予定しています。既に設置されているコンテナの奥には、さらに広い土地が用意されており、将来的には第2期としてここにも様々なお店を誘致する構想です。
 既に設置されているコンテナの中で、「コンテナ商店街」を推進しているリーダーのひとりである有限会社橋勝商店の橋詰真司社長、奥様で専務の橋詰智早子さん、株式会社東京屋の小笠原修専務からお話を伺いました。内閣府から陸前高田に来られ、復興の陣頭指揮をとられている久保田崇副市長にもご参加いただき、陸前高田の復興計画や「コンテナ商店街」の意義についてもお話を伺いました。最近の官僚は批判されることばかりですが、36歳の若き「行動する官僚」は頼もしいかぎりです。

 詳しくは、「現場千本ノック」で報告しますが、皆さんの思いを集約すると、「にぎわう“場”を早くつくりたい」という気持ちに行き着きます。「買いものが便利」という利便性だけでなく、みんなが自然と集まり、明るい声や笑い声が聞こえ、子供たちが元気に走り回っているような「にぎわい地」をつくらなければならないという切実な思いがその出発点なのです。
 仮設住宅では鬱病に罹る人が増え、孤独死や自殺者も出ています。そうした悲惨な状況を少しでも改善し、乗り越えるには、みんなが集まれる「場」をつくり、コミュニティを復興させなければならないという思いが、皆さんを突き動かしています。建物は「仮設」かもしれませんが、その思いは「本物」です。
 大規模ショッピングセンターなどに押され、全国各地で商店街の地盤沈下が止まりません。「シャッター通り商店街」などとも揶揄されます。しかし、町が興る原点を辿れば、ひとつの商店が商店街へと広がり、人の流れができ、町のにぎわいが生まれてくるのです。「商店街からの町興し」は被災地の復興にも必ずや大きなインパクトがあるはずです。
 とはいえ、「コンテナ商店街」を成功させるためには、まだまだ数多くの課題が残されています。理想と現実のギャップを埋めていかなくては、「商店街からの町興し」は実現しません。これからも微力ながら、陸前高田の「コンテナ商店街」を応援していきたいと思っています。

 そうした流れの中で、遠藤研究室が主催する次回OE研究会に、「コンテナ商店街」推進のリーダーである橋詰さんと久保田副市長をお招きするトークショーの開催が決定しました。テーマは「陸前高田の復興計画とコンテナ商店街の取り組み」(仮)です。日程は2012年1月20日(金)の夜、場所は早稲田大学です。詳細は別途お知らせしますが、多くの皆さんの参加を期待しています。

[今週の出会い]

 コンテナの前で、お会いした皆さんとの記念ショットです。訪れた時は「雪がちらつくかも・・・」と言われていたのですが、幸い雪は降りませんでした。でも、寒風の冷たいこと!被災地に大震災後初めての冬が訪れます。

[今週のシナ]

 朝の散歩から戻り、蒲団の上でスヤスヤと爆睡中のシナです。毎朝の散歩は元気に行っていますが、一気に寒くなってきたので、早足で行こうとします。初秋の頃は20~30分だったのが、今では10~15分。ほとんどジョギング状態です。「シナ、もっとゆっくり行こうよ・・・」と声を掛けますが、無視!私にとってもよい運動なのですが・・・。