Isao Endo  遠藤 功

遠藤功が「現場力」を語るコラムをお届けします

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早稲田大学大学院教授、株式会社ローランド・ベルガー会長を務める遠藤功のプロフィールを紹介します

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連載コラム「現場通信」

現場通信vol.8 コモディティ vs プレミアム

[2008-05-20]

 先日、三菱電機静岡製作所に招かれ、講演をしてきました。三菱電機は私の古巣であり、ビジネスマンとしての私の基礎を作ってくれたところです。三菱に在籍した10年間で、私はモノづくりとは何か、組織のダイナミクスとは何かを学びました。
 静岡製作所は当時から非常に競争力のある工場として、よく知られていました。作っているのは冷蔵庫、エアコン、そしてこれらの商品の心臓部であるコンプレッサーです。ご承知の通り、これらの商品はきわめて競争が激しく、商品開発力、モノづくり力、そして販売力が揃わないと、生き残っていくのは困難です。厳しい競争の中、三菱は消費者視点のアイデアが詰まった冷蔵庫や「霧ケ峰」ブランドのエアコンなどで安定したシェアを確保しています。
 しかし、激化するグローバル競争の中で、「ゲームのルール」が大きく変わっていることを原正一郎所長から聞かされました。
 たとえば、エアコン。世界市場においてエアコンの設置台数が激増しているのは、ご多分に洩れず中国です。中国のエアコン市場は現在2500万台。日本の総市場が750万台ですから、既に3倍以上の規模になっています。それでも、中国の住宅におけるエアコン設置率はまだ途上段階ですから、今後2倍、3倍と増えていくことは間違いないでしょう。そうすると、やがて中国市場は日本の10倍以上の規模となります。
 今、中国におけるエアコンのトップ企業は格力(GREE)という会社です。この会社の年間生産台数はなんと1500万台!日本の総市場の倍の規模の生産をたった1社が行っているのです。商品の品質も、日本製と比べるとまだ劣るものの、ここ数年で劇的に改善しているとのことです。
 これだけ歴然としたボリュームの差があると、いわゆる「コモディティ」と呼ばれる汎用普及品の市場で、日本企業が存在感を示すことは困難と言わざるをえません。世界に類のない最大級のマザー・マーケット(母国市場)を背景にした中国企業と、コモディティの分野で真っ向勝負を挑むは無謀以外の何物でもありません。この現実を日本企業はもっと直視する必要があります。
 だからこそ、日本企業はコモディティの“土俵”ではなく、より付加価値の高い“プレミアム”という新たな“土俵”を目指さなければならないのです。トヨタ自動車がレクサスというプレミアム・ブランドになぜあれだけの投資をして、本気で取り組んでいるのか。それはボリュームゾーンであるコモディティの車種においては、やがて中国、インドなどのメーカーが力を付け、あのトヨタといえども苦戦することが必至だからです。
 実際、静岡製作所のエアコンもそうした戦略を指向しています。中国における三菱の販売台数はわずか50万台。しかし、中国メーカーの商品に比べると、2倍、3倍の価格で売れているそうです。しかも、こうしたハイエンドの商品を買う中国の消費者は値引きを求めない。日本の三菱製のエアコンが設置されていることが、ひとつのステータスになっています。中国メーカーとは異なる“土俵”で、独自の存在感を示そうと努力を続けているのです。
 メーカーであれ、サービス業であれ、私は日本企業の将来は、真のハイエンド市場であるプレミアムにおいてグローバルで生き残る道を模索するしかないと思っています。中国、インドという巨大なホームマーケットを持つ企業が力を付け、台頭してくることの脅威を静岡製作所で再認識しました。

[お知らせ]

 5月初旬に日本能率協会マネジメントセンターより、私が監修した「事業戦略のレシピ」という本が出版されました。執筆はローランド・ベルガーの仲間である鬼頭孝幸、山邉圭介、朝来野晃茂の3人が行っています。戦略策定のフレームワークやツールを紹介する本は数多くありますが、この本は戦略を策定するステップに沿って実際にフレームワークやツールをどのように活用したらよいのか、その際の留意点は何かなど、「実行できる」戦略作りのポイントを満載しています。
 発売間もないのですが、好評いただき、既に重版が決定しました。是非、ご一読ください。
 尚、この本の出版を記念して、早稲田大学ビジネススクール遠藤研究室が主催する第18回OE研究会を6月12日(木)に開催することになりました。当日は執筆者の3人が講師として参加し、この本について“熱く”語ってくれることになっています。参加ご希望の方は遠藤研究室のホームページまでアクセスしてください。