Isao Endo  遠藤 功

遠藤功が「現場力」を語るコラムをお届けします

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早稲田大学大学院教授、株式会社ローランド・ベルガー会長を務める遠藤功のプロフィールを紹介します

講演活動についての概要を紹介します

『現場力を鍛える』『見える化』など、遠藤功の書籍を紹介します

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連載コラム「現場通信」

現場通信vol.14 輝く現場(3)

[2009-05-06]

 4月末に中部国際空港、通称セントレアを訪問する機会がありました。セントレアは開業当時日本初の民営空港として大きな話題となったのはご存知の通りです。
この世界的な経済不況の中、しかも最も深刻な影響を受けているトヨタ自動車をはじめとするトヨタグループのお膝元でもあり、旅客数の激減がセントレアを直撃しています。巨大な設備産業である空港というビジネスにおいては、景気の回復なくして業績の回復は非常に困難です。
しかし、セントレアの現場では地道なCS活動が展開され、開業以来進化を続けています。あまりよく知られていませんが、セントレアは世界的な空港評価制度であるASQ(Airport Service Quality)の旅客規模別ランキング(年間500-1500万人カテゴリー)で3年連続世界No.1となっています。この調査に参加している96すべての空港を対象にした総合評価においても第5位にランクインしています。(ちなみに1位はソウル・仁川、2位はクアラルンプール、3位はシンガポール、4位は香港とベスト5はすべてアジアの空港です)
開業後まだ4年の空港がどうしてこのような高い評価を得ることができたのか?トヨタ自動車出身で、開業当初社長を務められた平野幸久会長のお話を伺い、いくつかの現場での実際の活動を見て、その理由を理解することができました。

セントレアは「CS世界No.1空港」を目指して、開業当初からCS推進委員会を立ち上げ、「お客様の声」の見える化を通じた地道な改善活動を継続しています。たとえば、空港のターミナルビルの中に時計がなくて不便だという声が寄せられました。実は、時計自体は数多く設置されているのですが、建設の際デザイン性を重視したため、時計があまり目立たないように設置されていたのです。そこで、デザイン性というこだわりは捨て、誰もがすぐ見つかるような場所に時計を設置し直したのです。

お客様の声は毎年2000件以上集まります。そして、その声に基づいた地道だけど、地に足の着いた改善が継続的に繰り広げられているのです。
セントレアでは熱心なQC活動も行われています。製造現場ではなじみの深いQCですが、サービスの現場ではなかなか定着しないのが現実です。
しかし、セントレアでは現在53のサークルが自律的な活動を展開しています。年に一度の全社発表会では選ばれた12サークルが活動結果を発表、最優秀賞などの表彰なども行っています。

セントレアでは免税店の運営は自前で行っています。QC活動で高い評価を得たブルガリとティファニーの店舗を見学しましたが、現場で働く従業員の皆さんの知恵とアイデアが最大限に活かされた店づくりが行われており、感激しました。
見える化が導入された商品の小箱の在庫管理によって、小箱を探す手間が著しく短縮され、お客様をお待たせしない効果を生んでいます。また、店頭に陳列できない数多くの商品は、写真付きのフォルダーに整理され、お客様の商品選びの一助になっています。ひとつずつは小さな知恵ですが、そうした努力の積み重ねがCS世界No.1につながっているのです。
CS向上の起点はESです。現場で働く従業員が活性化しなければ、CSがよくなることなどありえません。そして、セントレアでなぜ従業員が活性化しているのかの秘密を私は現場で知りました。
ブルガリやティファニーなどの免税店で働いている従業員の人たちは、単に販売だけをしているのではなく、実は「仕入れ」も行っているのです。年に一度自分たちで実際にヨーロッパやニューヨークに赴き、自分たちで翌年売る商品の品定めをし、仕入れを決定しているのです。
彼女たちは単なる「売り子」ではありません。商品選定-仕入-販促-販売に至る一貫した責任と権限を持ったプロフェッショナルなのです。

現場にどのような「役割と仕事」を与えるのか。それによって現場のモチベーションは大きく変わるという当たり前のことを再認識した日でした。