Isao Endo  遠藤 功

遠藤功が「現場力」を語るコラムをお届けします

遠藤功が「現場力」を語るコラムをお届けします

早稲田大学大学院教授、株式会社ローランド・ベルガー会長を務める遠藤功のプロフィールを紹介します

講演活動についての概要を紹介します

『現場力を鍛える』『見える化』など、遠藤功の書籍を紹介します

各種メディア、各種媒体での掲載とその概要を紹介します

一流のビジネスパーソンを目指す人のための総合型ビジネススクール「カラーズ・ビジネス・カレッジ」を紹介します

「現場学」を研究し、強い現場づくりを目指す遠藤研究室を紹介します

遠藤功が「現場力」を語るコラムをお届けします

連載コラム「現場通信」

Weekly現場通信 vol.387 コミさん

[2018-05-14]

 ゴールデンウィークはほぼどこにも出かけず、家でのんびり読書をしたり、映画を観て過ごしました。読んだ本のなかの一冊が、田中小実昌著『題名はいらない』という本でした。
 田中小実昌といっても相当の文学好きでなければ知らないでしょう。芥川賞も受賞している作家ですが、けっして万人受けする本を書いているわけではありません。
 でも、通称「コミさん」として一部の人たちにとても愛された作家でした。私がローランド・ベルガーに入社した2000年に亡くなっています。
 私は小さなころから本好きだったので、大学生の頃からコミさんの本を読んでいました。でも、それ以上にコミさんを身近に感じていたのは、当時同じ街に住んでいたからでした。
 池上線沿線の雪谷大塚に私の実家はありましたが、コミさんも近くに住んでいて、トレードマークのニット帽をかぶり、商店街をひょうひょうと歩いているのを何度も見かけたことがあります。
 私がコミさんの本を溺愛するようになったのは、大人になり、コミさんの旅行記を読むようになってからです。旅行記といっても、普通の旅行記ではありません。ただただバスにひたすら乗っているだけの旅行記です。
 国内だけでなく、海外でもずっとバスに乗っています。何の目的も、何の当てもなく、ひたすらバスに乗り続ける。たまたま来たバスに飛び乗り、終点まで行き、また折り返してくる。
 特別なことやドラマは何も起きません。その街の日常に溶け込み、ただただ日常に身をまかす。そして、夕方になると、酒場に行き、酒をかっくらう。そうやって日々が流れていくというなんとも不思議な旅行記です。コミさんは作家というよりも思索家であり、哲学者でした。
 なかでも、『サンチャゴふらふら』という本が私は大好きで、何度も読み返しています。妙に心が落ち着くのです。
 今年の初め、神田神保町の玉英堂という古本屋をのぞくと、額に入ったコミさんの色紙を売っていました。「うしろから おされて」と記されたその色紙を、私はすぐに買い求めました。
 小学生が書いたかのような素朴で、味のある字。今は、私の書斎に鎮座しています。
 「うしろから おされて」っていいなと思っていたのですが、『題名はいらない』の中に同じタイトルのエッセイが収録されていました。そこにはこう書かれていました。

 「なにかを書かなきゃならないときには、『うしろから おされて』と、ぼくは二行書く。自分からすすんで書くことはない。
 『うしろから おされて』と書きながら、ぼくは説明する。『なにかに、うしろからおされて、よろよろと前にでる。まったく自主性のない、なさけない、ぼくのありさまです』」
 
 私もコミさんの気持ちが少しは分かるような年齢になりました。近いうちに流されるままバスに乗ってみようかなと思っています。

[今週の出会い]

 浅草・浅草寺の裏手から、スカイツリーと五重塔を見渡す風景です。浅草は外国人観光客だらけ。若かりし頃、パリの凱旋門やロンドンのトラファルガー広場に行くと、「本当に国際色豊かだな・・・」と思ったものでした。
 当時、まさか日本がそうなるとは思いもしませんでしたが、今では、東京や大阪も立派な国際観光都市です。観光立国・日本を目指す日本にとっては本当にありがたい限りです。

[今週のシナ]

 散歩から帰って、ソファでお昼寝中のシナです。ちょっと首の角度が変ですが・・・。ここのところ気温が高いので、午後の散歩は夕方に。散歩中は元気ですが、帰ってくるとさすがにぐったり。暑いときの散歩はほどほどにしようと思います。