Isao Endo  遠藤 功

遠藤功が「現場力」を語るコラムをお届けします

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早稲田大学大学院教授、株式会社ローランド・ベルガー会長を務める遠藤功のプロフィールを紹介します

講演活動についての概要を紹介します

『現場力を鍛える』『見える化』など、遠藤功の書籍を紹介します

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連載コラム「現場通信」

Weekly現場通信 vol.8 オペレーショナル・エクセレンス

[2010-03-01]

 金沢に本社があるアトム運輸の現場視察をする機会がありました。同社はコカ・コーラの物流・販売支援サービスを全国規模で展開しています。鶴賀裕行社長は創業者である父親が興した各種事業を受け継いだ際、コカ・コーラの物流・サービス一本に絞ろうと決断、今では売上高120億円の企業へと成長しました。アトム運輸はコカ・コーラだけを扱う唯一の物流・サービス会社です。
 配送センターである新宿営業所、そして自販機のメンテナンスを担当している白山工場(金沢近郊)などを視察しましたが、同社の真髄を目の当たりにしたのは新宿・歌舞伎町に設置してある自販機でした。
鶴賀社長にもご同行いただき、何十台もの自販機を見て回りました。普段あまり気にも留めない自販機ですが、じっくりと観察すると、その自販機を担当しているセールスマンの思いがこめられているのがよく分かります。
 セールスマンの仕事は商品の補充や代金の回収だけではありません。自販機の清掃や整備、商品構成の見直し、さらにはPOPなどを使った飾り付けによる販促も彼らの仕事です。単に商品を補充するだけではなく、「よく売れる自販機を作る」のが彼らのミッションなのです。
 実際、私が見たコカ・コーラの自販機はどれもピカピカで、商品構成や飾り付けにも細かい工夫が施されていました。写真の5台連なったコカ・コーラの自販機は1日に370本、年間13万本以上売り上げているそうです。手の掛け方、工夫次第で売り上げに大きな差が出ると言います。
 すぐ隣に同業他社が担当する自販機がありましたが、清掃も不十分で、飾り付けの工夫もまったくありません。自販機の補充・回収という一見単純労働のように思われる業務ですが、現場力の有無によってここまでの差が出るのです。

  

アトム運輸の自動販売機

  

同業他社の自動販売機

 歌舞伎町を担当しているセールスマンのひとり、滝浦さんに話を聞くと、彼はこう言いました。「自販機は自分のお店のようなものです」。この意識の差が業務品質に表れるのです。(写真は鶴賀社長、滝浦さんとのショット)アトム運輸はこの現場力でコカ・コーラの信頼を勝ち得、全国へと広がっていったのです。
 同社のミッションはこう謳われています。「顧客(世界のコカ・コーラグループ)の優位性確立に、オペレーション開発を通じて貢献します。」まさにオペレーションの品質によって、優位性を構築し、差別化を実現しているオペレーショナル・エクセレンスそのものなのです。
 そして、さらには「アトム・オペレーション信条」の3カ条が打ち出されています。これがすごい!

・オペレーションは、会社そのものの姿だ
・オペレーションで、差別化を図ります
・オペレーションで負ければ、会社はなくなる

 オペレーションそのものが戦略であり、経営であるとここまで明確に打ち出している企業はきわめて稀です。こうした経営者の姿勢や思想が現場に伝わり、「知識労働者」(ナレッジ・ワーカー)が現場から生まれてくるのです。

[今週の出会い]

 早稲田大学ビジネススクールの冬季集中授業で、サントリー武蔵野工場へ訪問した時の記念写真。この授業は留学生が対象で、今期は34名が受講しています。その国籍は中国、韓国、台湾、フィリピン、タイ、インドネシア、マレーシア、インド、スリランカ、モンゴル、ウズベキスタン、トルコ、イギリス、スウェーデン、米国、カナダとなんと16カ国!クリーンで、こだわりの製造工程を見学した後、できたての生ビールを御馳走になり、皆大満足でした!

[今週のシナ]

 今年の冬は例年になく、雪がよく降りました。「犬は喜び、庭かけ回り・・・」と童謡でも歌われているように、シナも雪が大好きみたいです。ピカピカと硝子のように反射する景色に興奮するのかもしれません。キーンと張り詰めた冷気の中を、尻尾を振り振り、元気に散歩します。鼻水を気にしながら、私はシナに引っ張られていきます。透明な冬の冷気を体感できるのも、シナのお蔭です。