Isao Endo  遠藤 功

遠藤功が「現場力」を語るコラムをお届けします

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連載コラム「現場通信」

Weekly現場通信 vol.12 広西チワン自治区訪問記(2)

[2010-03-29]

 今回は先々週訪問した中国の南寧、欽州の印象についてお話しましょう。南寧はびっくりするほどの大都会でした。高層ビルが林立し、夜にはライトアップされ、まるで「スモール上海」のようです。
 周辺部も含めると人口6百万人を超えるというのですから、当然と言えば当然ですが、ここまで街が発展したのはここ数年とのことです。日本人は上海や広州の発展ぶりはよく知っていますが、南寧についてはあまり知られていません。しかし、今中国沿岸部の開発拠点として一番注目されているのが南寧です。ベトナム国境に近く、ASEANへのゲートウェイとして大きな展示会やASEANの会議などが頻繁に開かれているそうです。
 急速な発展に伴い、不動産価格も高騰しているとのことで、平均的なアパートの価格は5年前に3000RMB/平米(4万5千円)だったのが、現在は8000RMB/平米(12万円)と2.5倍になっているとのこと。確かに、バブルと言えば、バブルですね。

 南寧から約150キロ、車で90分ほど南に下ったところに欽州はあります。欽州は典型的な中国の地方都市といった雰囲気のところです。街中は少しずつ高層ビルが建ち始めていますが、少し外れると昔ながらの生活が残り、郊外では稲作が行われ、牛たちがここかしこにいます。
 しかし、この欽州も昨年から大きく変わり始めたと言います。欽州は海に面していて、港があります。その港をASEANとのフリー・トレードの拠点として開発することを政府が発表したのです。南寧の不動産と同様に、それまで1000RMB/平米(1万5千円)だった平均的なアパートの価格が一気に3倍に高騰したそうです。開発の波はベトナムの国境近くにまで来ているのです。

 欽州には三娘湾という名の美しい砂浜があり、チェンメイがそこに連れていってくれました。この湾は中国で白イルカ(White Dolphin)を見られる唯一の場所だそうです。白イルカは大変貴重な動物で、パンダ同様国家一級保護動物に指定されています。三娘湾に生息するイルカ群もわずか400頭程度で、白イルカはその内のほんの一握りだと言われています。

 その浜辺は公園として整備されていますが、私たち以外には観光客は誰もいませんでした。平日の午後だというせいでもあるのですが、あれだけ人が多い中国の観光地でここまでガラ空きなのは異様です。おそらく、まだまだ告知が行き渡っておらず、知られていないのと、ホテルなどの観光施設が整備されていないのが大きな理由でしょう。
しかし、おそらく数年後にはこの美しい天然のビーチも開発が進み、白イルカを売り物にした一大リゾートエリアとなっていることでしょう。「中国のニース」「中国のゴールドコースト」と呼ばれているかもしれません。(既に開発が進んでいる海南島の三亜は「中国のハワイ」と呼ばれています)
その一方で、のどかで、手つかずの自然を残す砂浜を見て、複雑な気持ちになってしまいました。南寧が「スモール上海」になったのと同様に、欽州も急速に開発が進み、近い将来「スモール南寧」になるのでしょう。
経済発展とはある意味で、均一化、同質化を意味するのですから、それはやむをえないのかもしれません。しかし、経済発展が「無個性化」に行きついてしまったら、それは本当に発展と呼べるのだろうか?発展の勢いは止められませんが、だからこそコントロールが必要なのだろうと思います。

ところで、白イルカは見られたかって?モーターボートで20分ほど沖合に出て、真っ白なイルカと出会うことができました。本当に真っ白で感激!実は白は一番の年長、中年がピンク、そして若いイルカは私たちの知っているグレー色をしているそうです。真っ白になるまで長生きするイルカが少ないため、大変貴重なのだそうです。白イルカを見ると幸運が来ると言われているので、思わず拝んでしまいました。

[今週の出会い]

 南寧でチェンメイの長江商学院時代のクラスメート二人と食事をしました。中国流「乾杯!」の嵐でしたが、飲むのは「マオタイ」ではなく、フランス産赤ワイン。フランス人が見たら、愕然とするでしょう。
二人とも自分の会社を立ち上げた起業家。一人は北京と南寧で不動産業を展開。もう一人は欽州からさらに南に下がった北海(ベイハイ)という街で、ゴルフ、スキー、バイクなどスポーツ用グローブの製造・販売をやっています。     
この会社(利博盛安全用品有限公司)を立ち上げたのが李床鋒さん。(写真の小柄の人です)工場では3000人が働き、これまでは海外ブランドのOEM中心でしたが、今ではLABORSINGという自社ブランドを中国内で展開しているそうです。
李さんが今一番頭を痛めているのが、人件費の高騰。ちょうど中国訪問中に地方政府が相次いで労働者の最低賃金を引き上げる決定をしたと報道されました。主要都市の最低賃金は約1000RMB/月(1万5千円)。2003年が500RMB程度でしたから、7年間で倍増です。しかし、これは清掃などの単純労働の賃金であり、これでは実際には人はとても雇えないと言っていました。李さんの会社では職種によって2000~4000RMB払っていると言っていました。
「世界の工場」と呼ばれるようになった中国ですが、このままではコスト競争力の劣化は避けられません。

[今週のシナ]

 空き箱の紙を咥えて、“挑発”するシナ。これは「一緒に遊べ!」というメッセージです。トイレットペーパーの芯や空き箱をゴミ箱から漁ってきては、「とってみろ!」と言わんばかりに、逃げ回ります。しばらく追いかけ回して、ひとしきり遊ぶと満足します。いやはや、シナと付き合うのも大変です。